〜あみの小さな物語〜
書き手:村田 彩心
伊豆市の市役所の地域づくり課の渡邊さんと相原さんにお話しを聞いたときのこと。
お話をしている中で「様々なところを訪れた中で、伊豆の魅力はなんだと思いますか?」と質問された。
その時、私は「綺麗な海と山と川に囲まれている自然豊かなところが魅力だと思います」と答えた。
はじめて伊豆に来た時、率直にそう思ったからだ。
しかし、渡邊さんは「そうした魅力は、一時的に伊豆に来てくれる観光客の視点なのです」と話していた。
他の地域への移住を考えている人にとっては、交通や子供の学校、スーパーといった生活面での魅力がなければ、なかなか移住には繋がらないのだそう。
私はこの時、移住者を増やして町を活性化させる難しさを実感した。
私がこの村・留学で訪れた場所に対して感じていたものは、渡邊さんの言うように観光客の視点で楽しんでいただけのものだったってことに気付かされた。
改めて、この村・留学で何を学ぶのか、何を得たいと思うのかを考えるきっかけとなった。
「matane」というゲストハウスや自然体験を行う団体の代表である斎藤さんにお話を聞いた。
斎藤さんは子どもを対象に、自然体験を通して環境について考える環境教育に取り組んでいる。
斉藤さんによると、環境教育は特別なことではなく、自然体験を通じて子どもたちに「なんで?」を考えてもらい、気付きを与えていることが教育になっているそうだ。
「どうのようにして気づきを与えるのだろう」と思っていたところ、斎藤さんがお庭にある葉をちぎってきて「匂ってみて」と葉っぱを渡してくれました。
「この葉っぱはみかんの葉なんだけど、なんでみかんはこんな匂いがすると思う?」と言われ、自分の中で「なんでだろう?」と考えた。
私たちはみんなで話し合って「虫を寄せ付けないためだ!」と答えを導き出しました。
柑橘系はスッとした匂いがし、だから虫除けにも使われていると教えてくださった。
インタープリテーション(※)を体験して、誰かから教わるより自分で「なんで?」を考える視点が大事だと感じた。
なぜなら、自分自身で理解ができ、学びが深まるからだ。「そういうことだったのか!」と理解が深まり、本当の意味で学ぶことができる。
「なんで?」という視点は、視野が広がり本当のことが見えてくる。
感謝会では、村・留学で関わってくださった方々を招いた。
古民家やオンラインで発表を聞いてくださった方々を見て、私は思わず感動した。
なぜなら、こんなにたくさんの人が見ず知らずの大学生に手を差し伸べ、様々なことを教えてくれたということを実感したから。
そこで、改めて人との繋がりの大切さを感じたのだ。
オンラインでの授業やなかなか人に会えない状況の中、人と会って繋がる喜びや温かさを忘れていた気がする。
この村・留学で、紹介してもらった人からまた紹介してもらい、お話を聞きたかった人と繋がったり……と、本当に人脈がこれから生きていく上で重要だと実感した。
その上で。大事だと思ったのが出会いを大切にすることである。
村・留学で関わってくださった方々は共通して、一度お話を聞かせてもらっただけでなく、ご飯に招待してくださったり送迎してくださったり、お裾分けしてくださったり、最後まで私たちと関わってくださった。
それは一度の出会いでも大切に思っているからこそであると思う。
これが人が人を呼び、繋がりを形成していくのだろう。
オンライン授業の中で友達づくりに悩んでいた私にとって、とても大切なことを学んだ。
そして社会に出て、様々な人と関わっていく中でも大切なことである。
※地域資源を体験や実践を通してわかりやすく伝えること
村田 彩心(むらた あみ)
村・留学伊豆’21夏参加者/同志社大学 政策学部 2年生
村・留学に参加したきっかけは「価値観を変えたい」という想い。
留学といえば海外という偏見があったが、日本でも村などで価値観を変える体験ができることを知り、また、消極的で自分から行動を起こせずにいた自分を変えたいと思い、参加を決意。