私20歳。小さな大冒険。

〜実紀の小さな物語〜

2022年4月29日、

いつも歩いている東京駅がなぜか知らない場所に思えた。「どんな9日間になるんだろうか」漠然とした不安の中、三島駅に向かっていく新幹線が走り出した。三島駅から伊豆箱根鉄道に乗り換える際、初めて来る場所で胸が踊った。車窓から流れる景色、三島から伊豆に向かう空気全てが私の背中を押してくれているようだった。「頑張ってみようかな」と心に決めた時そこには9日間一緒に過ごす仲間が修善寺駅に集まっていた。

4日目の午後、その日は快晴だった。

狩野川の土手に上がり、ゴミ拾いが始まった。少し風があり、川の流れる音が妙に心地が良かった。辺りを見回し進んでいくと「お!こんなゴミある!」といった声でみんなが集まり、少しずつ距離が縮まっていくのが分かった。少しずつゴミを見つけるスピードも早くなり、ゴミ袋は重みを増してきた。土手から河川敷に進んでいくうちにゴミの大きさも変わり、「なんでこんな所に鉄パイプがある?!」と笑いに包まれながらゴミ拾いをしている事を忘れるくらい楽しい時間だった。

「そろそろ終わりましょう!」という掛け声でみんなが土手に戻っていく時に、私はなぜか少し寂しさを覚えた。「もっとゴミを拾えば、この場所を綺麗に出来るのになあ」と感じた。この時、私はゴミ拾いを楽しんでいたんだという事に気付かされた。今までの私は、「なんで他の人のゴミを私が拾わなきゃいけないんだ」と恨めしく感じていた。しかし、そんな事を考えていたらきりがない。「なんでも楽しんでやればいいんだ」と気付いた。 武智さんと加藤さんは、サバ―ソニックというイベントを運営し、海洋プラスチックゴミ問題に向き合い解決しようとしている。その中の活動の一環でゴミ拾いを自主的に行っているそうだ。2人は、「ゴミ拾いをしていく中で、コミュニケーションが取れる、ゴミニケーションやな!」と話していた。当初、ゴミ拾いをあまりした時がない私は、「コミュニケーションなんて取れるのかな?」と疑問に感じていた。

ゴミ拾いが終わり、武智さん、加藤さんというと話しながら後片付けをやっていた際、一緒に村・留学に参加していた神戸市外国大学のあやちゃんねるが「人に迷惑をかけるのが申し訳ないです。どうすればいいですか?」と質問をした。

武智さんは、「人には沢山迷惑をかけていい!自分がやりたいことがあるのなら人に沢山頼って、迷惑をかけろ!」と答えた。横で聞いていた私も、衝撃を受けた。私は19年間生きてきて、大人や周りに迷惑をかけることはいけない事だと感じていた。いつも周りの空気を読んで、迷惑をかけないように、と思いながら生きてきた。20歳になり、こどもから大人になっていく時にこの言葉を聞けた事。非常に大きな意味があると強く感じた。

6日目、またまた快晴の中、多くの方と協力し、田植えを行った。全て手作業で。

いつも遠くから見ている田んぼに初めて入った。ふやけた土と冷たい水。混ざり合っていて、ぬるい感覚を覚えた。足を取られながら、田んぼの中を進む。「普段暮らしていて、このような体験が出来る人というのは、どのくらいいるのかな。」そんなことを考えながら、田んぼの中に線引きをし、苗をまっすぐ植えられるようにしていく。線引きが終わって、いよいよ田植えである。「手伝うよー!」という声が田んぼの周りに響き、多くの人が協力しながら手植えをしていく。最初は、なかなか難しく苗が奥に入っていかず、苦戦していた。一緒に田植えを手伝ってくれたなみさんが「周りの土を集めておくといいよ!」と教えてくれた。実践してみるとどんどん上達し楽しく行うことが出来た。

大自然の中、みんなで行った田植えの景色は忘れることが出来ない。田植えをしていく上で、普段食べているご飯の大切さを改めて知った。何気なく食べているご飯。多くの人の知恵と努力の上で「頂いている。」その気持ちを忘れてはいけないと感じた。そして、それを周りの人に伝える。当たり前は当たり前じゃない。いつも気づいているようで、気づけていなかった。

9日間、非日常空間の中でこれからの生き方について多くのヒントを貰った。この経験は、社会に出てからもずっと心に残り続けるだろう。関わってくれたすべての人に感謝。

2022年5月24日

筆者 村・留学’22春参加者 坂田実紀/高崎経済大学 地域政策学部2年生 

村・留学に参加したきっかけ

単純に「面白そう」という想いから参加した。

大学の講義の中で実際に現場に行く事の大切さを学び、20歳という節目の中で何か行動を起こすきっかけになればと、参加を決意。

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