〜レオの小さな物語〜
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修善寺は坂が多すぎる。すぐに息が切れる。アップダウンが激しい地域だということを走りながら考えつつ、そのような場所で上手く田を広げ、その土地に合わせて農業を展開しているなと思った。つらいという気持ちと地域の良さが入り交じり、混沌状態だ。
これは、3日目の朝の話。
5月は毎朝5キロ走りたいと決めていた。今日から走ってみることにした。伊豆の朝は寒い。キンキンとした寒さが、自分の肌を貫通する。
走りながら気がついた。用水路の水がずっと流れている。平地のように見える場所でも水がずっと流れている。走る中でのBGMとして用水路のチョロチョロとした水の音は、自分のつらいという気持ちを少し楽にした。これは、田んぼ自体が階段状に連なっている証拠でもある。傾斜があるという地域の特徴を活かして田を作ることで、うえから下に水が流れるようになっているのだな。当たり前の事かもなのかも知れないが、このように田があって、水が流れていて、とてものどかな景色を肌で感じたのは初めてだ。鳥の鳴き声も水の音と一緒に聞こえて気持ちいい。5キロ走った後にシャワーを浴び、ストレッチをしていたらいつの間にか寝てしまった。この古民家は私たち学生を優しく包み込んでくれている気がする。
30分後、村留学のメンバーみんなで散歩しに行くことが決定した。
最初に走ったのは7時頃で、このときは8時半。もう一度同じようなコースをみんなで散歩したがそのとき何か違う感じがした。水の音や鳥の鳴き声は同じように聞こえるのに。さっきの時間よりも歩いたり走ったりする人が少なかったからだ。自分が一人で走った時はもっとおじいちゃんおばあちゃんが歩いていたり、犬の散歩をしていたりしていた。だけど、この時間にはもういない。なぜだろう。そんなことを思いながら、初めてみんなで歩いた伊豆の朝は一人で走る時とは別のよさを感じた。家に帰り、朝ご飯を作っていると海老名さんが訪れてきてくれた。
海老名さんはこのようなことを言う。「早く食べろ!草刈りするぞ!」ここでさっきの疑問が解消された。ここの地域のひとたちは早く起きて歩いたり散歩したりしているから、8時半には誰も歩いていたりしないのだ。そして、朝早くから自分の作業に移っている。海老名さんも早く起きて作業をしており、今日は一緒に作業したくてたまらなかったのだろう。とても笑顔だった。そして、自分も笑顔になった。自分たち学生がいかに一日の始まる時間が遅いのか。それに対してこの地域に住んでいる人がいかに一日の始まる時間が早いのかを感じた。この地域では時間が遅く流れている気がするが、それでも地域の人の活動時間は、はやかった。
朝ご飯を食べ終え海老名さんの指導のもと、草刈りが開始した。草刈り機のウィーンという音に混ざって水の音と鳥の声が混ざるこの環境がとても居心地良かった。草刈り機の使い方も工夫がいる。歯を地面と平行にして草を刈るのではなく、角度をつけて切っていく。そのようにすると切れるということを学んだ。平行で刈るときよりも、より簡単に草が刈れる感覚が心地よかった。朝から時間を上手く活用している。少しの工夫で物事が簡単になる。そんなことを学んだ朝だった。
この日から、朝という時間が待ち遠しくなった。
2022年5月16日
筆者 宇都宮大学4年 氏名:白金励大
村・留学に参加したきっかけ
インスタで#まちづくりをフォロー、村・留学の広告が流れてきて興味を持った。 まちづくりを実践しており、その知識を活かしつつ伊豆半島でリフレッシュしたいという思いのもと参加した。サードプレイスを求めて伊豆へ